読書日記 2010年

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「見る」とはどういうことか 藤田一郎 化学同人 ★★★☆☆

視覚は、嗅覚や味覚と違って、本という媒体を通して語るのに適している。「見える」ものは目に映っているものとは違うのであり、それは「錯視」という形で体験することができる。Edward Adelson の考案した "Checkershadow illusion" や Yoram Bonneh の motion induced blindness の効果は劇的で、誰にとっても非常に面白いものだろう。

一方で、著者自身も述べていることだが、脳の解剖学的な話が出てくると突然わかりにくくなる(第4章〜第6章)。それは、説明の仕方の問題というよりは、現在の脳科学のもつ構造的な問題のように思われる。大脳皮質のナントカ野はどういう刺激に反応する、という記載の羅列がいくら長くなったところで、サッパリ分かった気がしない。現状はまだ根本的な道具が足りなくて、何かパラダイム・シフトが起こらないと、脳は理解できないのだろう。(10/06/07読了)

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