読書日記 2011年

Home > 読書日記 > 2011年

世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア横断2万キロ 下川裕治 新潮文庫 ★★★☆☆

サハリンから間宮海峡を渡り、ユーラシア大陸最東端のワニノ駅から鉄道に揺られること2万キロ、車中26泊の末に、ポルトガルのカスカイス駅まで辿り着いた記録。私もかつて、中央アジアを通ってユーラシア横断を試みようとしたことがあり、大いに参考になった。世界はますますキナ臭くなってきており、ビザの取得がややこしそうだ。理不尽にソデの下を要求されたり、陸路での国境越えは何かと気苦労が多そうで、溜息が出る。

個人的に、本書で一番興味深かったのは、日本ではあまり馴染みのないコーカサス地方である。アルメニア・トルコ間は国交がないが、陸路で突破することは可能らしい(ただし、線路はあるものの、鉄道は走っていない)。著者はロシア側からカルムイク共和国とダゲスタン共和国を経由してアゼルバイジャンに入っているのだが、北カフカスは紛争地帯なので、1本前の列車がテロに巻き込まれている。私としては、ウイグルからキルギス→タジキスタン→ウズベキスタン→トルクメニスタン→イラン→アゼルバイジャン→アルメニア→グルジア→トルコという夢のあるルートで踏破したいわけである。まぁ、当分の間は実現できそうにないが・・・。

日本人は鉄道の旅に郷愁を感じる傾向があるが、鉄道は世界的に見ればマイナーな移動手段に過ぎない。バスのほうが、庶民の姿をずっとよく観察することができるであろう。だから、本書の酔狂な旅は、まさにこの本を書くためだけにしたようなものである。列車の待ち時間を除いて街を歩くこともせず、苦行のようにひたすら列車に揺られ続けるというのは、何が楽しいのかサッパリ分からない。

口絵にカラー写真が載っているのだが、これがいただけない。誠に失礼ながら、著者の写真がビジュアル的にイケてないのだ。こんなくたびれたオッサン(失礼・・・)が、こういうスタイルの旅をしたところで、読んでいる方がくたびれてしまう。やっぱり、旅人は若者でなければならない。本書を読了したところで、一つの旅が終わったという清涼感が立ちのぼってこないのだ。(11/12/21読了)

前へ   読書日記 2011年   次へ

Copyright 2011 Yoshihito Niimura All Rights Reserved.