読書日記 2013年

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世界の言語入門 黒田龍之助 講談社現代新書 ★★★☆☆

私を言語多様性の世界へと誘ってくれたバイブル的な本といえば、大修館書店の『世界のことば小辞典』である。(その改訂版とでもいうべき、『事典 世界のことば141』というのもある。)各言語について、それぞれの専門家がコンパクトな解説を書いているので、マイナーな言語の概略を知りたければこちらに当たってみるのが良い。

それに対してこの本は、一人の著者がとにかく色んな言語について書いてみようと試みたものだ。90の言語について、2ページずつエッセイがしたためられている。言語学者とはいえ(いや、だからこそかもしれないが)、あらゆる言語を知っているわけではない。著者の造詣や思い入れの深さの違いを反映して、エッセイも玉石混淆である。

著者の専門はロシア語なので、スラブ系の言語やそれ以外の東欧の言語もテリトリー内である。マケドニア語とかリトアニア語とか、著者の実体験に基づいたエッセイは、読んでいて楽しい。一方、アジアの言語(とりわけ南アジアや東南アジア)に対しては、あまり著者の愛が感じられない。アフリカ・オセアニアの言語はほとんどリストに含まれていないし、南北アメリカ大陸・オーストラリア・ニューギニアに至っては、完全にスルーされている。ナバホ語とケチュア語くらい入れて欲しかった。全体的に言って、軽いエッセイだからすぐに読めるのだが、カバーしてる言語の広さ、個々の言語に対する深さ、どちらもやや物足りなかった。『世界の言語入門』という教科書的なタイトルも、あまり相応しくない。

それにしても、アジアの言語は話者数が多い。ベンガル語、パンジャブ語、ジャワ語、テルグ語、マラーティー語、タミル語、ウルドゥー語あたりは5000万人以上もの話者を擁する巨大言語なのに、学習者の何と少ないことか。(13/01/25読了 13/02/06更新)

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