読書日記 2017年

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恐竜は滅んでいない 小林快次 角川新書 ★★★☆☆

古生物学というのは、どうも分かりにくい。その理由は、時間軸の情報が入ってくることと、和名がラテン語をカタカナ表記したものなので、なかなか覚えられないことによる。

基本的な知識を整理しておこう。
まず、恐竜(Dinosauria)の定義は、竜盤類(Saurischia)と鳥盤類(Ornithischia)を合わせたものである。翼竜(Pterosauria)や首長竜(Plesiosauria)は恐竜ではない。特に首長竜は、恐竜から見て系統的にワニよりも遠く、むしろヘビ・トカゲに近い。
鳥盤類は、トリケラトプスやステゴサウルスなどを含む。一方、竜盤類は、竜脚類(Sauropoda)と獣脚類(Theropoda)に分けられる。竜脚類はアパトサウルス(かつてブロントサウルスあるいはカミナリ竜と呼ばれていた)などを含み、獣脚類は、ティラノサウルスなどの大型肉食恐竜と、すべての現生鳥類を含む。つまり、鳥は恐竜の一種である。
ややこしいのは、鳥類は鳥盤類ではなく、竜盤類および(その下位分類である)獣脚類に属するということだ。

そして鳥類は、「始祖鳥と現生鳥類を含む最小のクレード」として定義される。この分類群は鳥群(Avialae)とも呼ばれる。
始祖鳥の学名は Archaeopteryx lithographica である。この種小名は、始祖鳥の化石が、石版印刷(lithograph)の材料の採掘地から発見されたことによる。
ちなみに系統学では、鳥類の代表としてイエスズメ Passer domesticus を用いる。鳥のプロトタイプということだろうか。

1996年、中国遼寧省でシノサウロプテリクス(中華竜鳥)Sinosauropteryx が発見されたことを皮切りに、羽毛で覆われた獣脚類の化石が次々と見つかっている。
しかし、鳥がどのようにして飛翔する能力を獲得したかは、今もってよく分かっていない。

子供向けの恐竜図鑑はたくさんあるのに、恐竜についての学問的にきちんとした入門書はあまりない。この本はコンパクトにまとまっていて、最近の動向を知るには良い。
恐竜の系統分類について、わかりやすい図が欲しい。それから、もっとフィールドワークの話があると楽しいと思った。
最近、日本の恐竜研究はアツいらしい。2013年から、北海道むかわ町(鵡川町と穂別町が合併してできた)で白亜期末のハドロサウルスの全身骨格化石が発掘され、現在研究が進められているようだ。(17/01/07読了 17/01/08更新)

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