読書日記 2020年

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幸福な監視国家・中国 梶谷懐・高口康太 NHK出版新書 ★★★☆☆

「幸福な監視国家」とは、言い得て妙である。
曰く、現在の中国社会は、ジョージ・オーウェルの『一九八四年』的世界というよりは、オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』のような社会だという。
すなわち、当の中国人のほとんどは、現在の中国社会を肯定的に捉えている。なるほど、監視社会化による「自由の喪失」よりも、それがもたらす「利便性・安全性の向上」が上回れば、市民の多くはそれを受け入れ、それどころか歓迎しさえするだろう。
しかしそれは、最終章で論じられているように、中国政府と価値観を共有しないマイノリティーにとっては「おぞましきディストピア」に他ならない。「新疆」ウイグル、香港、内モンゴルで今まさに進行していることを鑑みれば、それは火を見るよりも明らかだ。
中国というのは、まことに厄介な存在である。

とはいえ、「監視社会化」は、なにも中国に限ったことではない。どの国でも、コロナ後の社会は、「中国化」の傾向を強めていくのではないだろうか。
そして、世界の「分断化」も、コロナによってますます加速していくだろう。
例えば、Facebookやtwitterで中国本土の中国人と交流できないことは、草の根レベルでの分断化を促進しているように思う。中国は再び「近くて遠い国」になっていくようだ。(20/10/02読了 21/01/30更新)

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