読書日記 2022年

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味と香りの話 ★★★☆☆ 栗原堅三 岩波新書

本書の出版は1998年で、すでに絶版になっている。これは味覚受容体の発見(1999年)よりもわずかに前で、味覚研究はこのあと劇的な進展を遂げることになる。
皮肉なことに、こういう科学的な啓蒙書というのは、最新の話題を盛り込めば盛り込むほど賞味期間が短くなってしまう。逆に、歴史的な話は、いつまで経っても色褪せない。

第7章までは味物質や匂い物質、フェロモンについての雑学的な話題で、非常に面白い。特に甘味物質について詳しく、ミラクリン発見の物語など参考になった。
ただ、系統的にヒトに近い生物ほど人工甘味料などの甘味を感じる傾向がある、ということをもって「生物は進化するといろいろなものに甘味を感じる」(P.167)というのはおかしい。それは単に、甘味物質の定義が人間にとっての甘味物質だからに過ぎないだろう。ヒト以外の生物には甘くて、ヒトにとっては甘くないような物質もあるはずだ。

第8章以降は神経科学の話になるが、ここはちょっとわかりにくかった。
この分野は発展が著しいので、現代的な視点から見ると誤った記述もある。それはそれで、当時どのように考えられていたかがわかるという点で面白い。(22/10/11読了 22/10/15更新)

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