読書日記 2023年

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動的平衡 ★★★☆☆ 福岡伸一 小学館新書

ややこしい分子生物学の概念を説明する際に、どこまで正確さを犠牲にすることが許されるのか、どんな比喩を使って誤魔化すのかという点において、大いに参考になった。
2009年出版なので内容はやや古い…と思いきや、STAP細胞とかオートファジーとかの新しい話題も追記されている。
最終章の動的平衡の「数理モデル」(?)は、なんか変。こんなのが研究対象になりうるのだろうか。

ところどころ妙な記述があるのが気になる。

  • P.208:ヒョウ(Panthera pardus)とライオン(Panthera leo)が同種(の亜種)というのは、いくらなんでもおかしい。もちろん、(同属だが)別種である。
  • P.251:サヘラントロプス・チャデンシスは、ヒトの系統と(現存するヒトの最近縁種である)チンパンジーの系統が分岐してから、ヒトの系統へといたる最古の化石種(の候補)である。一方、エチオピアで発見された16万年前の人骨は、(当時)最古とされたホモ・サピエンスの骨である。
    この両者はまったく異なるもので、混同のしようもない。それなのに、両方に「人類」などという、学術用語でない(対応する英語もない)言葉むりやり当てはめたことで無用の混乱を引き起こしている。ヒトという種の定義が曖昧なわけではない。
  • (23/02/04読了 23/02/10更新)

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