読書日記 2023年

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現代思想入門 ★☆☆☆☆ 千葉雅也 講談社現代新書

この本が東大・京大で売れているという。
私も、大学生の頃、同じタイトルの本(『現代思想・入門』別冊宝島、ただし中黒が入る)を買って、読もうとしたことがある。典型的な中二病だった。

まず、「現代思想」自体が、これっぽっちも「現代」思想ではない。
それは1960〜80年代という大昔に、フランスとかいうごく限定された地域で発表された古典的思想である。なぜこんなミスリーディングな名前がいまだにまかり通っているのか。
では今、そんなものを学ぶ意味があるのだろうか?著者の言い分はこうだ:

現代思想を学ぶと、複雑なことを単純化しないで考えられるようになります。単純化できない現実の難しさを、以前より「高い解像度」で捉えられるようになるでしょう。

はっきり言って、ナンセンスだと思う。
かつてそういう病的な思考があったことを、思想史の断片として学ぶ価値はあるかもしれないが、そこから現代を生きるための処方箋などこれっぽっちも得られない。
マルクスやフロイトが本質的に新しいことを言っているのはわかるが、デリダにせよドゥルーズにせよ、こんなものは言葉遊びに過ぎない。さしたる内容もないことを、難しそうに偽装しているだけだ。それがカッコいいと思っていること自体がダサすぎる。

しかし、純然たる齟齬するものたちが、わたしたちの表象=再現前化的な思考には近づくことのできない或る神的な知性の天井の彼岸を、あるいは非類似の<大洋>の、わたしたちには測深できない手前にある冥府を形成しているということも明らかである。

最後の「付録 現代思想の読み方」で、こういうのを有難がって必死に読み解いているが、唾棄すべき悪文の典型である。こんなのは知性ではない。

本文もしかり。一見すると読みやすそうだが、ほとんど意味不明で、字面を追っていくのが苦痛でしかなかった。(23/06/25読了 23/12/17更新)

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