読書日記 2008年

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子どもたちの太平洋戦争 山中恒 岩波新書 ★★★★☆

著者は1931年、満州事変の年の生まれである。それから足かけ15年、日本はずっと戦争をしていた。その頃、国民学校(1941年までは小学校)ではどのような教育がなされていたのだろうか。

例えば、当時の中学校の口頭試問の問題は、

  • いま日本軍はどの辺で戦っていますか。その中で一番寒いところはどこですか。きみはそこで戦っていらっしゃる兵隊さん方に対してどんな感じがしますか。では、どうしなければなりませんか。(府立四中──私の出身校だ!)

  • 日本の兵隊は何と言って戦死しますか。何故ですか。いま貴方が恩を受けている人を言ってごらんなさい。どうすれば恩を返すことが出来ますか。(実践高女)
  • というようなものだった。本書には、慄然とさせられる事実が多数記載されている。ごちゃごちゃ言う前に、とにかく読め、と言いたい。まさに、正気の沙汰とは思えない。国家全体が狂気に陥ってしまったのである。当時の「少国民」が書いた作文を読むと、教師がかなり手を入れたにしても、あまりの痛ましさに涙が出てくる。
    それにしても、この時代の大人たちは、一体何を考えていたのだろう?

    本書は、日本が平和を謳歌していた、1986年に発行された。当時は、この本の内容は笑い話で済まされたかもしれないが、今こそ本書を読む価値があるだろう。現在、戦争体験者はもの凄い勢いで減少している。若いうちにもっと色々と話を聞いておくべきだった、と思うが、既に手遅れである・・・。(08/01/31 読了)

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