読書日記 2009年

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うつ病 岩波明 ちくま新書 ★★★★☆

アーネスト・ヘミングウェイの家系には、鬱病による「死の刻印」が濃厚に刻み込まれている──。鬱病を「心のかぜ」などというのは、本当の臨床を知らない人々によるたわごとである、と著者は切り捨てる。鬱病は、死を招き寄せる恐ろしい病である。

著者は犯罪精神医学を専門としているので、重篤な鬱病患者が引き起こした事件についてのケース・スタディを行っている。この著者の本は格調が高く、不思議な味わいがある。鬱病について、臨床の立場からバランスよくまとめた好著だと思う。
抗鬱薬についても詳しく記述されている。今日、鬱病の治療薬として第一に用いられているのは、SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor)およびSNRI(Serotonin-Noradrenaline Reuptake Inhibitor)である。
鬱病のようなメジャーな病気に関しては、怪しい本も出回っているので注意が必要である。本書では、抗鬱薬による治療を否定する生田哲氏の著作を、名指しで批判している。(09/05/12 読了)

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