読書日記 2009年

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IQってホントは何なんだ?知能をめぐる神話と真実 村上宣寛 日経BP社 ★★☆☆☆

著者曰く、日本には知能の研究者はほとんどいないのだそうだ。この本は、サイエンスとしての心理学の立場から、日本ではほとんど紹介されてこなかった最新の知能研究の結果を解説する、という触れ込みになっている。

しかし、その内容にはかなり失望した。正直言って、この程度のことしか分かっていないのか、と思った。
実際に使われている知能テストの問題は、拍子抜けするような類のものである(「イギリスの首都はどこか?」など)。こんなので知能が測定できるのか、と思ってしまうが、結局のところ、知能には様々な因子があるとしても、それらは互いに強く相関しあっているということらしい。
また、知能指数はほとんど遺伝によって決定されるらしい。幼少の頃は環境からの影響もかなりあるが、成人するとそれはほとんどゼロになるという。これは、私にとっては希望を与えてくれる結果である。

そもそも、知能が高いとはどういうことなのだろうか?その心理学サイドからの回答は、「知能テストのスコアが高い」というだけである。もっと遺伝学や脳科学からの研究が必要だろう。ただ、「知能の遺伝子」を探るような研究は、なかなかやりにくいのかもしれない。

この前、MENSAの入会テストを受けてきた。ここでは、Raven's progressive matrix が使われている。(例はこちら。English→Start→Start で開始。ただし英語の知識は一切必要ない。右下の枠に入る、もっとも相応しいものをA~Hから選ぶ。これは非常に良くできていると思う。)
日本ではほとんど話題にならないが、世の中には、高知能団体というのは実はたくさん存在する。Mega Society などの極端にIQが高い人を対象にした体系的な研究はないのだろうか。そういう話題も欲しかった。

本書に関してもう一つ付け加えれば、著者の読者を見下した文章が不愉快だった。著者は、知能の研究をしているにもかかわらず、自分の知能に対してコンプレックスを抱いているのだろうと思った。(09/07/04 読了)

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