読書日記 2009年

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日本の山と高山植物 小泉武栄 平凡社新書 ★★☆☆☆

世界の山に登ってみて(大して登っている訳ではないが・・・)改めて気がつくのは、日本の山の美しさである。著者が指摘するように、その美しさは「多様性」にある。際だった個性をもった山々が、これほどの密度で犇めき合っている地域は、地球上には他にない。だからこそ、「日本百名山」のようなものが成立しうるのだろう。
日本は、世界に類を見ないほど地形の多様性に恵まれているのだから、もっと自然史教育を充実させるべきだと思う。

植物学の知識があれば、山歩きがもっと楽しくなるだろうと思う。それに加えて、地質学の知識があって、その地形の成り立ちが想像できるようになれば、更に風景が違って見えるだろう。山は、文化人類学的な視点から見ても面白いが、自然地理学の対象としても実に面白い。

緯度も標高も低い日本の山に高山植物があるのは、世界的に見れば例外であるとか、ヨーロッパアルプスにはハイマツ帯がないとか、前半は面白かった。しかし、後半の地質学の話はイメージが湧きにくく、分かりにくい。
いっそのこと、カラー写真をふんだんに使って、自然史博物館のようにしてくれれば良かったと思う。そういう本は、まだ見たことがない。

ところで、どぎつい赤だった平凡社新書のデザインが、いつの間にか、落ち着いたブルーに変わっていた。(09/11/14 読了)

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