読書日記 2011年

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アスペルガー症候群 岡田尊司 幻冬舎新書 ★★★☆☆

説明はとても平易なのだが、結局「アスペルガー症候群」が何なのかますます分からなくなった。というのも、本書によれば、ビル・ゲイツも、スティーブ・ジョブズも、ジョージ・ルーカスも、アルフレッド・ヒッチコックも、エジソンも、ダーウィンも、アインシュタインも、ウィトゲンシュタインも、宮沢賢治(一生涯童貞だった!)も、ヒトラーも、みんなアスペルガー症候群だったというのである。

アスペルガー症候群の人が示す傾向とは、いわゆる「天才」と呼ばれる人たちから喚起されるイメージそのものである。対人関係が苦手、周囲に無頓着、言語能力は優れているのにコミュニケーションが一方通行、顔や表情を見分けられない(「空気を読めない」)、言葉を額面通りに受け止める、同じ行動パターンに固執する、細部に過剰にこだわる、感覚過敏、動きがぎこちない、などなど・・・。とはいえ、病気としての「アスペルガー症候群」と「アスペルガー的傾向」とは違うはずであり、本書ではその区別が曖昧に思えた。アスペルガー的な傾向をもつ人なら、(自分を含めて)周りにあまりにも多数存在するのだ。

アスペルガー症候群は、高機能自閉症(IQが正常な自閉症)とも異なる。高機能自閉症では言語発達の遅滞が見られるが、アスペルガー症候群では言語性IQは正常かそれ以上だという。ただ、この辺の区別は、専門家の間でも意見の分かれるところのようだ。いずれにせよ、アスペルガー症候群は自閉症スペクトラムの一部なので、自閉症の軽度なものと考えてもそう間違ってはいないだろう。

「似たもの夫婦仮説」というのが面白い。自閉症は遺伝的な要因が大きいが、アスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラムの有病率は近年急増している。この仮説によれば、自閉症遺伝子を少数もっている状態がアスペルガー症候群である。現代社会はアスペルガー的な人が繁栄しやすい社会であり、アスペルガー的な人同士が結婚することによって、自閉症遺伝子が蓄積しまうというのである。(12/06/14読了)

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