読書日記 2016年

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生命と記憶のパラドクス 福岡伸一 文春文庫 ★★★☆☆

福岡ハカセの文章は、淀みなく流れていき、とにかく読み易いのだ。
他愛もないエッセイとはいえ、文庫本にしてきっかり3頁、この短さで何かについて書き続けるというのは、誰にでもできることではない。
「切なさというのは有限性の気づきである」(191頁)なんていう名言が、さりげなく書かれている。

あとがきが美しい。

記憶は不思議ならせん階段である。

という文章で始まり同じ文章で終わる、この本自体が不思議ならせん階段のようだ。
それにしても、福岡博士はロックフェラー大学で奴隷のごときポスドク生活を送っていたらしいのだが、一体何があったのだろう・・・。

ただ、肝心の、進化についてのエッセイはいまいちである。
中立だっていいのだから、「不用だから消えたのではなく、消えたことが有利でなくてはならない」(90頁)という説明はおかしい。それに、いわゆる「ダーウィン進化論」とネオ・ダーウィニズムはまったく別物なので、103頁の説明は正しくない。福岡ハカセは中立説を知らないのだろうか?(16/09/18読了 16/12/28更新)

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