読書日記 2018年

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週末ちょっとディープなベトナム旅 下川裕治 朝日文庫 ★★★★☆

ホーチミンから、フランス植民時代に造られた「歴史のない」高原の街、ダラットへ。そして、国境を越え、カンボジア・アンコールワットへ──。
下川さんの旅は、もの凄くディープなわけでなく、ちょっとだけディープなのが良い(「週末」に行けるような旅ではないが)。緊張感のないゆるい感じが、読んでいるとクセになる。長続きする旅というのはこういうものなのかな、と思う。
情報が新しいのも良い。陸路での国境の越え方など、有用である(必ずボラれるらしい)。

ベトナム人がよく食べるのはフォーよりもブン、ダラット高原で菊の栽培をする日本人、近くに中国系の工場ができて変わりゆくカンボジアの村、夕方以降のアンコールワットはカンボジア人の世界──。紀行文というよりは、何度も東南アジアに足を運び、何十年にわたって定点観測を続けてきた下川さんだからこその、ルポルタージュになっている。

ベトナムは元気な国だ。現在、高度経済成長のまっただ中にある。お隣のカンボジアは、まさにこれから、高度経済成長に突入しようとしている。
それは、純粋に羨ましいと思う。しかし、そういう時代は一国に一度しか訪れないし、その影で失われゆくものは二度と戻ってはこない。(18/05/27読了 18/06/02更新)

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