読書日記 2022年

Home > 読書日記 > 2022年

メンデル ★★★★☆ エドワード・イーデルソン 大月書店

ヨハン・グレゴール・メンデル(1822-1884)とチャールズ・ダーウィン(1809-1882)は、19世紀生物学の二大巨頭だが、2人の人生は対照的である。
かたや、大英帝国の大金持ちの家系に生まれ、莫大な遺産を受け継ぎ、人生で一度も職についたことがない。かたや、貧しい農家に生まれ、生活苦から修道院で働かざるをえなかった。
ダーウィンの著作『種の起源』は熱狂的に受け入れられ、生前に大きな名声を博した。一方のメンデルは、地元ブルノではそれなりの名声を得たものの、それは修道院長としての功績に対してだった。科学史的に見れば、農業や気象学で多少の業績を挙げた風変わりな聖職者に過ぎず、そのまま忘れ去られるはずだった。

よく知られているように、メンデルの遺伝の法則は、メンデルが地元のローカルな学会誌に発表してから35年後、死後16年も経ってから、3人の遺伝学者によって再発見された。
メンデルの名が遺伝学の講義の真っ先に登場し、世界中の学生がその業績について勉強するようになるとは、生前は誰一人として予想しなかっただろう。
しかもメンデルは、プロの科学者ですらなかった。数年の間、趣味的に行ったたった一つの研究が、遺伝学という学問の礎になったのだ。
あまり認識されていないが、メンデルは人類史上でも稀有の天才だろう。数学でいえば、リーマンやラマヌジャンにも匹敵するかもしれず、あるいはそれ以上かもしれない。

世にダーウィン本は数多くあれど、メンデル本は少ない。その中では本書が一番よくまとまっていて、資料的価値も高い。訳もこなれていて読みやすい。(22/04/09読了 22/10/09更新)

前へ   読書日記 2022年   次へ

Copyright 2022 Yoshihito Niimura All Rights Reserved.