読書日記 2012年

Home > 読書日記 > 2012年

フィンランド語のしくみ 吉田欣吾 白水社 ★★★★☆

フィンランド語はウラル=アルタイ語の仲間だから、ヨーロッパの言語というよりも、むしろ日本語に似ているなどと言われる。しかし、韓国語やモンゴル語に比べてみると、やはりヨーロッパの言語だという印象を受ける。

冠詞や、名詞の「性」はない。けれども、動詞の人称変化がある。例えば、「踊る」tanssia(danceと似ている!)ならば、

minä tanssin
sinä tanssit
hän tansii
me tanssimme
te tanssitte
he tanssivat

という具合に変化する。これは、ラテン系の言語の人称変化を彷彿とさせる。1人称・2人称は主語を省略できる点も同じである。

韓国語やモンゴル語と似ているのは、母音調和がある点だ。また、前置詞ではなく後置詞を使う点も類似している。面白いのは、場所を表す「〜に/で」に相当する後置詞が2種類あることで、「〜の中に」(-ssa)と「〜の上に」(-lla)を区別する。

Sauna on metsässä. サウナは森の中にあります。
Kissa on tuolilla. 猫は椅子の上にいます。

"on"は、英語のbe動詞に相当するものの3人称現在形。同じように、「〜から」(起点)、「〜へ」(終点)に対しても、「中」と「表面」を区別する。

例えば「食べますか?」と聞かれたら、"Yes"ではなく、「食べます」と答える。しかし、"No"に相当する語はある。

Syötkö? 食べますか?(-koは疑問を表す)
Syön. 食べます。
En. いいえ。

フィンランド語の数詞は、1 yksi; 2 kaksi; 3 kolme; 4 neljä; 5 viisi; 6 kuusi; 7 seitsemän; 8 kahdeksan; 9 yhdeksän; 10 kymmenen である。7以降が、数詞にしてはやけに長い。例えば89は、 kahdeksankymmentäyhdeksän(カハデクサンキュンメンタユフデクサン) という。これでは、数を数えるのも、計算するのも大儀だ。

フィンランド人には、Aho(アホ)さんやAhonen(アホネン)さんという姓の人がいる。これらは比較的有名かもしれないが、さらにAhokainen(アホカイネン)さんもいる。Paajanen(パーヤネン)さんやOjamaa(オヤマー)さんもいる。

フィンランド語では、ロシアはVenäjä、スウェーデンはRuotsi、そしてフィンランドはSuomiという。固有名詞なのに、全然違うのが面白い。

フィンランドには行ったことがあるけど、スウェーデン語との2言語表記だとは気付かなかった。北の方に行けば、サーミ語を含む3言語表記となる。日本におけるアイヌ語や沖縄語の現状と比べると、サーミ語はなんと幸福な言語であろうか。(12/01/05読了 13/02/10更新)

前へ   読書日記 2012年   次へ

Copyright 2012 Yoshihito Niimura All Rights Reserved.