管見妄語 常識は凡人のもの ★★★☆☆ 藤原正彦 新潮文庫
ここに掲載されているエッセイは、2016〜2017年に書かれたものだ。
著者自身が前書きで書いているように、この頃の政治の話題といえばモリカケばかりで、実にくだらない。誠にどうでも宜しい。
でも今にして思えば、この頃は、嵐の前の凪のごとくに平和だった。
あれから世界は──コロナに翻弄され、ロシアはウクライナを侵略し、イスラエルはパレスチナで虐殺の限りを尽くし、国際法をガン無視してイランとシリアを空爆した。アメリカではトランプが再び当選し、正気の沙汰ではないトランプ関税に、情けなくも世界中の国が踊らされた。日本では安倍氏が暗殺され、自民党が歴史的な大敗を喫して極右勢力が台頭した。
もし藤原先生が今もこの連載を続けていたら、エッセイのネタには事欠かなかっただろう。
そう、藤原正彦のエッセイは、子供時代の思い出を書かせれば超一流なのだけど、現代日本社会に対する主張はどこぞの党のそれを聞いているかのようだ。
女性が子供を産むのは国家のため⋯というのは、流石にアウトなのではないか。(25/07/21読了 25/10/09更新)