読書日記 2025年

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教養としての日本の城 ★★★★☆ 香原斗志 平凡社新書

取り立ててお城に興味があったわけではないけれど、日本全国津々浦々を旅するうち、いつしか多くのお城を訪れていた。
だが、本書を読んで、日本のお城がいかなる存在であるのか、初めて体系的に理解できたような気がする。

当然ながら、日本の城は、木造建築である。釘などの金属製品はほとんど使わない。
ヨーロッパ人の宣教師たちは、あらかじめ加工しておいた木材を運び込んで、あっという間に壮麗な城を築いてしまう「木組み工法」に舌を巻いたという。
だから、解体や移築も容易だった。
一方で、火災には滅法弱かった。「火事と喧嘩は江戸の華」というけれど、燃えることを前提として造られていたと言っても過言ではない。
それで、土台である石垣(城趾)ばかりが全国に数多く残されることになる。

著者はイタリア等ヨーロッパの文化にも造詣が深いらしく、ヨーロッパからの影響が強調されている。
築城の技術が急速に発展したのは、信長の時代だった。その嚆矢となったのが安土城である。
純然たる日本建築に思えるお城だが、そこには、信長がヨーロッパの宣教師から見聞した最新の知見がふんだんに盛り込まれていたという。
しかし、徳川の世になり、鎖国が徹底されてから後は、お城の進化はぴたりと止まってしまい、頑なに過去の様式を繰り返すばかりとなった。もっとも、武家諸法度により勝手な築城を禁じられたということもあるが。

明治維新後、悪名高き廃城令が発せられる。
それでも、今日まで12の天守閣が辛うじて生き残ったのは、奇跡のように思える。戦前までは20の天守閣が現存していたが、戦火で失われてしまったのは誠に残念だ。

そういう視点で眺めてみると、日本には実に多くのお城があったことに気付かされる。改めて全国のお城を訪れてみたいと思った。
まず、国宝5城のうち、唯一未訪なのが松山城である。四国にはさらに3つの現存天守(宇和島城、高知城、丸亀城)がある。それから、再建ではあるが、九州にある島原城と原城(城趾のみ)もぜひ訪れたいところだ。(25/11/08読了 25/11/24更新)

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